fc2ブログ

LOVE~HEART~ 3

2008–03–30 (Sun) 00:23
そして、終わりの世界へ……。



深夜の時間帯。俺たち部活メンバーは監督に頼み今日だけ魅音と一緒にいさせてほしいと頼んだ。
「圭一君…。本当に大丈夫なのかな?」
「少なくとも、大丈夫かどうかはわからないが大丈夫じゃない気がするな」
「あまり無理はなさいなさいまし。圭一さんはそう言ったところが心配ですわ」
「わかってるさ。今回は危険を承知でやってるんだ。そのことは俺が一番理解している」
レナと沙都子はうるさいぐらい心配をしていた。命の危険があるのだから心配するのは当然と言えば当然だ。
しかし心配以上にやめて欲しいと願う気持ちの方が強い。だがやめられるわけはない。
「そんなに心配するな。ちゃんと魅音と一緒に帰ってくる」
いつもの笑みで二人の頭をわしゃわしゃと撫でた。
今は、二人を安心させてあげるのが一番大事なことだ。だからここでおかしな言葉をかけるよりはいつもの調子で声をかけるのが一番いいと思った。
二人は涙を堪えながらうんうんと何度も頷いた。それは隠していた辛さ故か、会えないと感じてしまった悲しみか。
「圭ちゃん……」
詩音はゴクッと喉を鳴らし言葉を飲み込んだ。
二人みたいに心配ごとを言おうとしたのだろう。しかし詩音は静かに深呼吸をし冷静な自分で顔を固めた。
「ちゃんとお姉を連れて帰ってきてくださいよ。そうじゃないと弄り相手が少なくなってつまらなくなってしまいますからね」
相変わらず詩音は詩音だな、と思わせる強がりに俺はああ、と笑顔で答えた。
もう…この三人には言うことはない。最低かつ最大の言葉は交わし色々なことを胸にしまいこんだ。これ以上の会話は決意が揺らぐことを俺たちは知っていた。
「圭一……いいかしら?」
別れ…というのは間違いだがそれに似たような会話を終えたところで梨花ちゃんは俺に声をかけた。
そこで全ての思いを空にした。そして何も感じずに静かに呼吸を合わせた。
ここからは俺一人の戦い。仲間への意識も終わったあとのことも全てをシャットダウンした。そして、頭に残ったのは魅音の想いと鬼への憎しみだけだった。
「……ああ!!!」
静かに怒りを燃やしながら、俺は勇ましく頷いた。
ここからはもう……己と魅音だけの世界での…小さくて大きな戦い。
「それじゃあ話した通りに魅ぃの手を」
梨花ちゃんに促されるがままに魅音の小さな手をギュッと握った。触れ合う温もりが感じられずもう冷たくなってしまった手はまるで死人みたいだ。ちっと舌を鳴らし下唇を噛んだ。
「わかっていると思うけどこれからやることは一歩間違えば死ぬわ。そのことだけは忘れないように」
「ああ。わかってる」
「じゃあ…始めるわ。目を閉じて魅音のことだけを考えなさい」
その言葉に言われるがままに俺は魅音のことだけを頭全体に広げ描いていった。
笑顔で俺に微笑む魅音。
手を握られ恥ずかしそうに顔を赤く染める魅音。
キスをされて恥ずかしさと嬉しさが交じり合う魅音。
記憶は有限なはずなのに止まることを知らないかのようにドンドン記憶が頭中を駆け巡って来た。
どんな表情も仕草も想いも、全て全て愛しい。世界でただ一人、俺だけが愛した少女。
魅音、魅音、魅音、魅音、魅音、魅音、魅音、魅音、魅音、魅音、魅音、魅音。
何度も何度も名前を呼んで心が通じ合うことを祈った。通じ合わない心は不具合を呼び拒絶を起こす。
そう、これは壁を通るための想いの鍵だった。
「圭一…ちゃんと帰ってきなさいッ!!!」
その言葉を最後に俺の意識は一瞬のうちに闇の中に消えていった。




暗闇を抜けた先は光、なんてお決まりはどこにも存在しない。
真っ暗闇の中を俺は流れていくのを感じられた。身体も存在していれば思考だってあるらしい。しかしそれ以外にも、全て存在していた。
「くっ…ッ」
痛みが身体中を駆け巡っていく。一瞬の痛みだと思ったら今度は別の場所が痛んだり、そこだけが重点的に痛いと二通りの痛みに身体中を支配される。
しかしそれは間接的なものなものに近い。痛いと思うのは何かにぶたれたなどではなく、身体から痛みを発するもの。判りやすく言うなら、胸を締め付けられるや頭が痛いなどに感じる痛みだ。
「うっ…あ…くっ…!!!」
痛みのレベルは半端ではなかった。風邪で感じる頭痛や悲しさで締め付けられる痛みとはわけが違う。声を隠し切れないほどの痛み、涙が出てきそうになって死んでしまう気がするほどの恐怖が痛みから湧きあがる。
しかし不思議なことにその痛みと共に記憶が頭に流れ込んでくる。
『あの時…あんなことを言わなければ』
『私のせいでまた傷つけてしまった』
『もう……痛いのは嫌』
『これ以上は…きっと後悔するし不幸にしてしまう』
これは……あいつの記憶。いや、後悔の念、なのか?
色々なネガティブ。そのほとんどが後悔と辛さだ。魅音はこんな痛みを背負いながらずっとずっと耐え続けていたのか。
「ッ!!!…ああぁ!…く……、そっ」
想えば想うごとに想いは身体中に痛みを発していく。そして強ければ強いほど痛みの強くなる。
これじゃあ、拷問もいいところだ。
「ちく…しょっ…あああぁっ!!!」
時間が経つ事に想いと痛みが強くなっていく。耐え切れない声はドンドン大きさを増し意識もおかしくなっていく。
「ああぁっ!!!………い、てぇッ…よ」
それだけを言い残し俺は意識らしい意識を失った。


意識が回復したのはそれからどれぐらいしてからだろう。
目の前に広がる見覚えのある光景を見て俺はそう思うしかなかった。
それは…古手神社にある高台。それはあの時、魅音と口付けを交わした時と同じ空と光景だった。
階段の前にいる俺に対して…夕焼けを見えている人影が一つ。見覚えるのシルエットだった。
「……来ちゃったんだ」
「ああ。色々と辛かったからな」
「…ばか」
いつもの日常を意識させる会話だがここは非日常の世界。しかしその顔は日常の顔だった。
「……ここは私の心の中。やっぱり圭ちゃん迎えに来てくれたんだ」
「まるで迎えに来るのを期待した言い方だな」
魅音は俺がどこにいるのかを悟っていることを知りながらも俺にわかるように説明した。そんなことは十分理解をしていたが言われて実感らしい実感が浮かび上がってくるのを感じた。
だが、そんな親切とは対照的に迎えに来たことには首を横に振った。
「ううん。来ないで……欲しかったほうが強いかな」
悲しそうに囁いた。ここは音がないからそんな声も耳には届いていた。だが魅音もそれはわかっていたはずだ。だから俺にこう言いたかったのだろう。
「今すぐ帰ってくれ…そう、言いたいのか?」
魅音はうんと即答する。それは俺への思いやりからの答えなのだろう。じゃなければ即答なんてしないはずだ。少なくとも俺はそう思った。
「だけど帰らないんでしょう?圭ちゃんだからね…言わなくてもわかるよ」
心を読んだと思ったが魅音とは長い付き合いだ。俺の性格や癖なんて知り尽くしたのも同然だ。
俺は言いたい言葉を飲み込みながらそれに頷いた。
「…じゃあ、話そうか」
帰れ、といいながらいきなり話そう、と俺を引き止める。その意図にはどんな意味があるのだろうか。
少しだけ…何をしたいかわかった。
「俺のことを気遣って、か。まあ、訊きたいことは訊くよ」
とりあえずと言うことで、まず最初に自殺の意図のことを訊いた。
「やっぱり、自殺したことが不思議なんだね」
「当たり前だろう!!!」
話すのも辛そうに俺の顔を視界から消し夕焼けを見つめた。その姿はあの時とシンクロして少し切なさが混みあがってきた。しかしそれ以上に恐怖があった。
「ここに来たってことには驚きはないよ。全て、鬼が教えてくれたから。って違う話してちゃダメか。まあ自殺の原因は鬼にあるってことだよ」
何がまあ、なんだ。しかし一つだけわかったと言うよりもやっぱりと鬼のことを考えた。
「全部、聞いたことは聞いてるんでしょう?私の自殺の原因をさ」
「聞くことはな。鬼と俺が原因だって聞いたよ」
魅音はそう、と肩を落とした。
「それじゃあ具体的なことを話してあげるよ」
振り向きながら魅音はそう言い俺の元へ歩み寄ってきた。俺も同じように歩み寄りたかったが足が動かなかった。
いや足なんてないもの同然だろう。これは見かけだけだ。実際は意識だけで身体なんて人形と同じように動けないんだ。それを知っているからこそやっぱり悔しくて悲しかった。
「私が自殺した理由は私の中の鬼を止めるため。鬼の力はね、とっても強いから死ぬことぐらいしか止められなかったんだよ。って言っても全部を止められるわけじゃなかったけどね」
「全部って、どういうことだ?それに鬼を止めるなら何でもっと確実な方法で自殺をしなかったんだよ」
まるで自殺するなら確実に自殺しろ、と言うような言い方は自分の中で気づいている。しかし何でそんな言い方をしたのかわからない。言葉を…もう少し優しくしたかったのに。
「私の鬼は生まれた頃から蠢いてたんだよ。園崎の人間はそれを自然に抑える術を知っていた。だから今まで何事もなく生活出来た。でも自分の中で大きな出来事が起きるとそれが抑えられなくなっちゃうこともあるんだよ。それが数を重ねていってね、鬼に心も体を授けてしまう形になってしまう」
「だから鬼に心も体も奪われる前に自分から死のうって考えたわけか」
「うん。そうしないと鬼がみんなにどんなことをするかわからなかったからね」
魅音は苦しみつづけたのだろう。近い将来に自分は鬼に飲み込まれ自分を失ってしまうことを。そしてこの身でみんなを傷つけてしまうことを。
それを知っているからずっとずっと悲しんでいたのだろう。そして、戦いつづけた。
「それは…俺がどうにかしてやれなかったのか?」
「無理だよ。鬼は24時間365日、私を見続けて離さなかったんだよ。しかも自分の精神の中にいたから一瞬の気の緩みが自分の時間を短くしてしまう。だからそんな考えも捨てないと私自身が耐え切れなくなっちゃうから」
「……隙を見せたらダメってことか」
「そう。たとえ癒されても隙を見せてあけてしまった部分を鬼は確実に侵略し力を伸ばしてしまう。そうなったらまた同じことの繰り返しになってしまうから、ずっとずっと…」
自分の身を抱きながら魅音はそう言った。とても悲しそうに言う姿を抱き締めてあげたいが人形の身体を動かすことは出来ない。その悔しさに唇を噛もうにも噛めず、心の中でクソと思うしかなかった。
「だけどね、鬼は確実に力を蓄えて私を奪おうとした。だからね…自殺もあれが限界だった」
「……それって、屋根から飛び降りることしか自殺する方法はなかって言いたいのか?」
そうだねと魅音は頷いた。その目は罪悪感に満ちていた。やはり自殺には罪の意識が大きいのだろう。
「手首を切るのが確実だったんだけど、そのときに限って力が強くて、結局屋根に登ることだけが精一杯だった。今考えてみるともっといい方法があったと思うんだけどね」
冗談を言う口調なのに力がまったく感じられなかった。それは魅音の心境とほぼ同調していたのがわかった。
「…でもお前に会えたよ」
「私は死にたかったんだよ?それは圭ちゃんの感情でしょう」
「……………」
それには何もいえなかった。ただそれを素直に受け入れるしか俺には出来なかった。
「まあ、最後に遺言みたいな感じで言うことができるか」
「なっ?????!!!!!」
まるで自分が死ぬことを悟ったように魅音は真剣な眼差しでそう言った。
「まず、圭ちゃんは覚えてる?私にあげた最初のプレゼント。えっと、最初は…」
「夏のあれだろう?忘れるわけないだろう」
「あれに……私の気持ち全部、残してきたから」
遺言書…と言いたいのだろう。しかし魅音はそれを言わなかった。きっと言ったら俺が悲しむし自分もそれを言うのが辛いのだろう。魅音は死ぬことを望まないことは俺がよく知っていたから。
「んじゃ、遺言として言うとだね」
とまるで自分の未来を諦めたように話を続けていった。
「私は圭ちゃんの愛していたよ。世界でただ一人、私が全力で愛せた最高の男の子だよ」
目尻に涙を溜めながら精一杯強がっている。
こんな時にこの身体は動くことを知らないなんて……。自分の無力さを呪いながらも魅音は力を振り絞りながら続けた。
「だから生きて欲しい!!!私の分も生きて生きて、そして幸せになって欲しい!!!」
それは心からの願いなのだろう。だがそれを見ることは彼女には叶わない。
それを知りながらも涙を流さないように頑張って頑張って想いを繋いでいく。
自分の本当の望みがそんなことでいいのかと言ってやりたいが、それを飲み込んで耳だけをオメオメ傾けつづけた。拒絶の心は…きっと別れの扉へと繋がっている。それを悟ってしまったからこそ。
「笑って、遊んで、泣いて、苦しんで、そして幸せになって下さい!!!それが…園崎魅音の最後の愛情ですッ!!!!」
最後は涙を流しながら自分の体を力いっぱい抱き締めながら全ての想いを俺にぶつけた。
…涙が流せたら流していただろうに。
…体が動くなら抱き締めてやりたかっただろうに。
…声を出せたら…力の限り「嫌だ」と言えただろうに。
………その言葉を最後に俺は意識を飛ばしていった。
彼女の行き先はどこにもない。だが俺にはあった。それが憎らしくて憎らしくて、無力な自分を呪わずにはいられなかった。






見えない……みえない……ミエナイ。
どこにいるかも俺は理解できなかった。
動かない……うごかない……ウゴカナイ。
何も動いていない。身体も脳も心さえも。
魅音……みおん…ミオン。
なのに、彼女の名前だけはわかった。だが、わかっただけだった。
「みおん……みおん」
もう何も残っていない。全て空の人形でしかない。それは俺の周りにも言えた。
「もっと…いっしょ、に……いた……かった、のに……な」
しかし空の人形にも最後の機能は残っていた。

――――――涙



シネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ。
少なくとも言うことは言えたはずだと思った。圭ちゃんへの最後の力は最後まで出し切って残りの命はもうあいつにぶつけるしかなかった。もう死ぬことでしか解決はない。
シネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ。
頭の中で揺さ振りをかけてくる。それに割れてしまいそうなほどの頭痛がして意識を保つだけでも大変だった。
シネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ。
精神の中とは言えこれは私の身体だ。これが死ねば私は死んだのも同然だ。そして心を奪われてしまえば死んだ時よりもひどいことになる。
少なくと、鬼は人を殺し続けることだけはわかっていた。それが鬼の破壊衝動と古くから伝えられた歴史の中で身についてしまった唯一の術。
シネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ。
それを知ってしまっている私は同情したくなるがそんなことに情を費やしている時間はない。
ここは私の精神だ。言うなれば人の妄想を全て実現化できる場所だ。圭ちゃんを呼びたければ妄想の圭ちゃんを呼び出せるし欲しいものを想像すれば出てくる。だから…死ぬことを想像すれば…。
「……いっそ、苦しまずにすんなりと死ねるやり方を考えるか」
……皮肉だな。最後に考えることが自分の死なんて。

最後くらい……圭ちゃんを考えたかったよ。



愛してるよ…死んでも……ずっとずっと





全部明かそうかって考えたけどそうなってしまったら最後の最後で面白くないので。
次は……エピローグです。『そして1年後』と言っておきます。
スポンサーサイト



« LOVE~HEART~ 2 | HOME |  ためるべからず »

コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

感想

読ませて貰いました。
悲しいですね。
鬼を止める為に最愛の人を守る為に死を選ぼうとして、死に切れなかなかった魅音さん。
愛する人を助けようと死の寸前の間際の法迄使い、魅音さんの心に入り、彼女の自白を聞き、弾き出された圭一さん。
そして、二人をあざ笑う様に、魅音さんの心を蝕み、浸食する鬼。


一年後となる次回話が気になります。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

チェリオさん
>そうですか。感動系を本格的に書いたのは初めてだったので心臓バクバクでした^^:
内容を考えて書くのは…その人物の心境とほぼシンクロしなくてはいけないのでよくあります。そのせいで進まなくなってしまいますこともありますが(おいおい

影法師さん
>悲しいイメージが強いのは仕方ないです。そう言った話にしたので^^:

トロイメライ魅ぃさん
>切なさもかなり強めの暗い話にしたんので。泣ける話には切なさが欠けてはいけませんから。

羽さん
>こんな死に方をするのはかなり辛かったですよね。
最後の最後まで辛さと悲しさは忘れませんよ。

コメントの投稿

 
管理者にだけ表示

 | HOME | 

FC2カウンター

最近の記事

最近のコメント

月別アーカイブ

カテゴリ

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

プロフィール

キラ

Author:キラ
中二病の同人大好きな変態。アニメよりゲーム派。
07th作品はうみねこよりもひぐらし。
いまだに圭魅が大好き主張は変わらず。
創作活動は別館で進行中。

カレンダー

04 | 2024/05 | 06
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

リンク

リンク

参加中同盟

ひぐらしのなく頃にWebRING

貰い物

わけあい:18禁圭詩×魅マンガ ヂャイロ