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LOVE~HEART~ 4

2008–03–31 (Mon) 23:34
エピローグです。最後の最後の展開と悲しい結末です。



今日も一日が過ぎていく。
古手梨花は一日一日が過ぎていくことに少しだけ退屈していた。
それは世界の秩序。だから時間が流れ日が変わるのは仕方ない。しかし古手梨花の退屈はそれを指してのものではない。
「………」
流れゆく時間を感じていくことに彼女は心地よさを感じていた。なら何が退屈だったのか。
「もう……一年ね」
彼女は世界の秩序に退屈したのではなく欠けたこの世界に退屈していた。


昭和60年。この年の卒業生は竜宮レナ、ただ一人だけだった。
本当ならもう一人いたのだが…彼はもうこの世界にはいない。その日からそろそろ一年が経とうとしていた。
卒業式は59年の園崎魅音とほぼ同じだった。違うというならばそれは数だろう。卒業生が一人だけいない、という悲しい現実だ。
「あの日から、この世界が面白くなくなってきたわ」
高台から見える雛見沢と夕焼けを見ながら梨花は退屈そうに呟いた。
あの日とは、前原圭一が園崎魅音を取り戻そうとした日を指していた。その日からの世界が面白くないと梨花は言う。
「あの二人は…本当にどうなったのか。羽入、あなたは知らないの?」
羽入と言われた彼女は呼ばれ、梨花の傍らに歩み寄った。
「僕が思うに…圭一は魅音の心から離れることを拒んだ。それだけしか言えません」
「…確証は得られないのね。まあ仕方ないと言えば仕方ないのだけど」
予想通りというみたいに梨花は羽入から顔を反らした。しかし残念だと、微かだが表情に表れていた。
羽入は横顔を見ながら悲しそうに俯いた。
「あの二人は……最後までお互いを思ったのかしら」
梨花にはその気持ちがまだわからなかった。仲間たちに感じている気持ちも赤坂に感じていた気持ちも違う、愛情と言う偽りのなく心の底から好きだと思える感情。梨花はまだそう思える人と出会えていない。
しかし羽入には二人の気持ちを多少ながら理解することが出来た。何故なら羽入も愛していた人がいたからそれに近いかはわからないがなんとなく察すことは出来た。
「僕は、そう考えます」
「…………そう。なら幸せと見れるかもしれないわね」
梨花の見方は他者からの見方だ。
他人から見てその二人は幸せに見える。キスをしているから幸せなのだろうと感じる。抱き合ってるから嬉しそうと感じる。笑顔でいるから喜んでいるのだと感じる。そんな見方だった。
他者から見てその二人は幸せ。だがそれが本当に真実なのかはわからない。キスをしているのは不本意かもしれない。抱き合っているのは寒いだけかもしれない。笑顔で入るのは自分の気持ちを隠しているだけかもしれない。この時点で、矛盾は発生する。
だからそれは憶測でしかない。それにその二人はもう梨花が会えない場所にいる。そんな気持ちは彼らしかわからない今この場では憶測が真実になってしまう。だが虚偽にもなる。
「梨花、それは半分だけです。圭一が魅音を想ったように、人が人を想うのは辛いものです。想えば想うほど一緒にいたくなる。だからこそ想いの強さは時として自分の爆弾にも他人への凶器にもなります。梨花はそのことを十分その身で体験したはずです」
羽入に言われ梨花は、詩音の暴走を思い出した。
『想いの強さは時として自分の爆弾にも他人への凶器にもなります』その言葉はまさに詩音を意味していた言葉だ。悟史をどれだけ彼女は想ったのだろう。それはきっと圭一と魅音と同じくらいの気持ちだったのだろう。好きな人のためなら自分は鬼になり人を殺めることも躊躇わない。それは全て悟史への想いだけの自己満足であった。しかしそれの元は悟史への恋心が発端となっているのは言うまでもない。その想いの強さゆえに道を間違えてしまったことも。
梨花は考えた。いや考えたふりをしているだけで自分の答えはすでに出ていた。
「人間の心は……誰にもわからないわね。自分にも他人にも…神様にも」
間違いでなければ正解でもない答え。しかし梨花はその答えだけが自分の中の正解だった。



昭和59年3月2○日
園崎魅音…急性心不全のために死亡
前原圭一…急性心不全のために死亡

その数ヵ月後
園崎魅音の自室から遺書と思われる物を発見。
遺書は自室に飾ってあった人形の服の中にあったと第一発見者の古手梨花は供述している。
その中身にはこう記されていた。

[一枚目]
遺書
これを読んでいる頃には私はもう亡くなっているでしょう。ですがここに私の全ての想いを残しました。
(もし亡くなっていないのなら亡くなった後に見て下さい)

[二枚目]
まず最初に、ごめんなさい。私は自殺をするしか道はありませんでした。それが園崎の血だからこそそうするしかないと知っていたからです。
園崎家は代々鬼の血を引き継ぐ異能のものたち。しかしここ何十年かは平和だったと聞きましたがここにきて私がその平和を壊すものになりかけました。詳しいことはお母さんや頭首に訊けばわかると思います。
自殺の意図は鬼の消滅を狙ったものです。しかしそれが成功したか失敗したかはこれを読んでいるみなさんしかわからないことです。もし失敗していたら、遅いかもしれませんがごめんなさい。
全ては鬼と私の問題でした。それ以外の人には何も関係がありませんので疑ったり責めたりしないで下さい。もし私を想っているなら、これを実行して頂きたい。

[三枚目]
家族・仲間へ。
きっとみんな私を許せないことは十分承知の上です。私は何でも一人で溜め込んで一人で解決する性格なのでこのようなことをしてしまいました。自殺をする前ですがそれがみんなの怒りを買うことになるのはわかっています。しかし私は自殺という考えで全てまとめました。ごめんなさい。
家族のみんなにはいい迷惑になったのはわかっています。自分が死ぬ前に娘が死ぬことは最大の親不孝と聞きます。ごめんなさいじゃ言い切れませんが、ごめんなさい。ここまで育ててくれた婆っちゃやお母さん、お父さん。そしてお姉ちゃんには感謝しても感謝しきれません。本当ならこんなことを書く日が来なければいいと思ってましたが、これが私の不幸だったのです。本当に、ごめんなさい。
そして、部活メンバーの諸君。本当にごめんね。最後まで諦めないっていう言葉があったけど途中で諦めちゃった。部長なのにこんなことをして部長失格だね。本当にごめん。もっとたくさん部活やって色々な場所で騒いで楽しく過ごしたかったけど、できないや。本当に、ごめんなさい。

[四枚目]
愛しい人へ。
あなたにはなんとかけばいいかわかりません。それほどまであなたは私にとって大きく大切な存在です。きっと私の心の中であなたが一番大切な存在だと思ってます。しかしこれはあくまで憶測のはないです。人間の心は誰にもわかりません。人にも神様にも。ですが私はそれだけを思えるだけで十分幸せです。
あなたは私を失ったことに傷つき悲しみ憎むかもしれません。ですがどうかそれを乗り越えて下さい。そして、一つだけ約束して下さい。どうか私のことを忘れないで下さい。
あなたのこと、ここに全部書こうとしても書ききれません。なので最後に一言だけ言わせてもらいます。

[五枚目]
私を愛してくれてありがとう。
圭ちゃん。


未だに心不全の原因は謎のままである。






暗い闇の中には一筋の光がある。
それは世界の秩序が作ったことだ。光と闇は対なる存在。しかし光りあっての闇。闇あっての光だ。わかりやすく例えるなら、太陽の光があるから日影がある。日影があるから太陽がある。しかしそれでは言葉遊びだ。だが間違いではない。
世界はそんなもので出来ている。一つのものには必ず対なるものが存在している。生と死も、同じだ。
「ここ……は?」
目が覚めるとその人は病院にいた。窓から光が差し込み部屋中を白く包み込んでいた。音はなく気配もない。まるで一人だけ取り残されたような気分だった。
「やっと…あえ、た」
その声は目の前のベットで寝ていた人物から出されていた。佇んでいた人は寝ていた人の前に近づいていく。
「な…ん……で?」
「おれ、が……つく、った」
『おれ』と言った彼は息遣いがとても荒そうだ。息をするのも精一杯みたいなのに声をだしその人を迎え入れた。
「ぜん…ぶ、おまえ…の、ため…だった……み、おん」
『みおん』と呼ばれた彼女は彼の前で涙を流し始めた。
「なん、でなの…?けい、ちゃぁん」
「すこしでも…いっしょ、に……いた……か、った」
彼は今できる最大の笑みで彼女を安心させようとするが彼女にとってそれはとても痛かった。胸が焼けるように痛く、声に出せない気持ちが蠢いていた。
「けいちゃん…なんで……私、死んだはずじゃ」
「たし…かに……でも、おれが…それを、うばった…ような、ものだ」
彼はこう答えた。彼女の心不全を自分が全て受け取った、と。しかし彼女の心不全は避けられないものだ。彼が奪ったのは彼女の時間、心不全になるまでの時間を少しだけとったのだ。
「あのば、なら……できた…からな」
全てが思い通りになる世界。彼はその世界で自分の思い描いた世界で彼女の死を少しの間だけ回避した。自分の命を使って…。
「嫌、いや、イヤッ!!!!なんで先に死んじゃうの!!!私を一人にするの!!!???」
それは変えられない運命。死ぬことは全ての人に平等なもの。彼の死を彼女が受け取るのはこの世界では不可能だ。
涙を流しながら必死に訴える彼女の髪を彼は優しく撫でた。
「ごめん、な……ほんと、なら…だきし、める…のに………これ、しか…できない、や」
少しずつ小さくなっていく声を彼女は必死に耳に刻み込んだ。彼女はこの場を理解していた。最悪な現実を…。
もう……ダメ、なんだ。
「みおん……おれ、おまえ、に…あえて……よか、った」
「嫌ッ!!!聞きたくない!!!!圭ちゃんの最後の…言葉なんて…」
この場を呪わずにはいられない魅音は圭一を責めた。先に死んでしまう彼を…最後の言葉を聞いてしまう自分を…もう会えない世界を…。
「たくさん…デー、ト…したかった、な……えい、が…みて…デザー、ト……食べて…」
「そんなの、いつだってするよ!!!!!デートも映画もデザートも、一緒に一緒にッ!!!!!」
圭一の手を握りながら魅音は涙を流し続けた。この変えられない死を受け入れられない彼女にはもう彼の死を見守りながら涙するしかなかった。
「それで……え、っちな…ことして…も、っと…す、き…て、いい……たか、った」
「馬鹿馬鹿馬鹿ッ!!!!!なんで…今になって!!!!」
「いま……だか、ら…だよ」
もう力を失った圭一の手を魅音は離そうとはしなかった。この手を離してしまったら圭ちゃんはもう…と悟ってしまっていた。受け入れられない現実を、理性が勝手に受け入れていくのがどうしようもなく悔しかった。
「さい、ごに……い、い…か?」
「いやだよッ!!!!最後なんて言わないでよぉっ!!!!!まだまだ私と圭ちゃんは生きていくのにッ!!!!生きて…いく、のに…」
それ以上は声が出なかった。悲しみ以上に絶望が胸に広がり圭一の布団に顔を伏せてしまった。
「み…お、ん」
もう一分ももたないと感じた圭一は、最後に魅音の頭を優しく撫でた。わしゃわしゃではなく、触れるだけだ。しかし圭一の愛情が全て入っていた。
魅音は胸の中がとても温かくなった。そして、恐る恐る顔を上げた。
「わら…って、くれ」
圭一はそこで声を出す気力を失った。あとに残ったのは動かない身体と消えゆく命、そして魅音の顔だけだった。
魅音は…わかってしまった。圭ちゃんは二十秒ももたないと。
「………本当に…馬鹿…なんだからぁッ!!!!」
満面の笑みと最後に口付けを交わした。
「……………」
圭一は唇が離れるのと同時にあることを言い。
「え…?…けい、ちゃ、ん」
静かに……眠りについた。


この世界は想像の世界。だが消えないのは私が生きているからだ。
だがわかっていることがある。
「私も…そろそろか」
死は避けられないのは私も同じだ。でも圭ちゃんの死は心不全と言うよりも寿命みたいだった。なら私も同じようなものかな。
「その間…どうしようか」
そんなものは決まりきっていた。
優しく圭ちゃんの手を包みこみ布団の上に顔を伏せた。
最後の死は…圭ちゃんと一緒に死にたい。
唇に残る彼の温もりを感じながら私も瞼を閉じた。
「本当に…馬鹿なんだから」
そう言いながら自分の顔が笑っていることに気づいていた。やっぱり嬉しかったんだ。
「最後は圭ちゃんのことだけを考えるよ」
願った願い。こんな死を迎えられたことは嬉しかった。それに彼の目の前なんて…私は。
「好きだよ。今も…これからも」
小さな恋心を胸に私は眠りについた。それはすばやくあっさりだったが悔いはなかった。
白いカーテンだけが穏やかに靡いていた。




一年後の話はその後の状況ですね。とても虚しい世界ということが理解できれば。
その後の世界は魅音の具現化の世界を圭一が無理矢理発動させて出来た世界です。そして時間軸は心不全になる一歩前です。
あとはまあ…想像でお願いしますm(_ _)m
感動系の内容なんですのでこんな終わり方は泣ける!!!と思いました。想像の中でこれを書くのは、泣けて作者なりにキツイかったです(〒〇〒)
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コメント

自分の命を使ってまで魅音と一緒に痛かった圭一・・・
こんな展開になるとは・・・ほんと感動します。

感想

読ませて頂きました。
二人の死、それは梨花さんのこの世界への執着の打ち切り。
それは周りの人にとっての、日常の欠落。
自らの命を使って迄、圭一さんは魅音さんと一緒に居たかった、ただそれだけ。
圭一さんの事が愛おしく、本当は死にたくはなかった魅音さん。
二人の恋の結末は、お互いの死なんて余りに辛いですね。

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羽さん
>死んでしまうことは変えられなかったので最後に思いつきでこうなりました。
これならいける気がしたので…そのお言葉、嬉しい限りです。

影法師さん
>一人も欠けない世界、と言うのが梨花の求めていた世界なので欠けた世界は求めていなかった。そんなわけで諦めさせました。
圭一と魅音の想いがそれほど強かった。これもこれで一つの恋だと私は思います。

トロイメライ魅ぃさん
>それは隠れた想いにあたりますね。
最後の最後に受け入れた魅音に安心感を覚えるのはそれほど話を奥深く理解していたことですよ^^

全 俺 が 泣 い た ! !

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中二病の同人大好きな変態。アニメよりゲーム派。
07th作品はうみねこよりもひぐらし。
いまだに圭魅が大好き主張は変わらず。
創作活動は別館で進行中。

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