fc2ブログ

情尽し編 其の八 映画

2008–04–30 (Wed) 23:00
流れる川の如く時は刻み、暴れる魚のように想いは弾け、新たな想いが顔を出す。
重なり合う心は…一つの丘を目指し、最初の日の夜を迎える。



「どうでしたか?なかなか面白かったでしょ」
「ん……まぁ…それなりには」
もう時期夜になるというのに興宮はいまだ人通りが多くこれから夜になることを忘れさせてしまうような賑わいがまだ続いていた。
スーパーのセールスで客を呼ぶ声。公園で遊ぶ子供たち。帰り道なのだろう、興宮の学校に通う学生たちは商店街の店で買い物を楽しんでいた。
見るからに夕方の風景なのだが、その賑やかさはやはり夜を忘れてしまいそうだった。
「賑やかだな。夕方だって言うのにまだ冷めない」
「そうですね。興宮は雛見沢で唯一の最寄の町。雛見沢の人間だけじゃなく興宮の人間や他の町の人間が集まりやすい夕方はいつもこんな感じですよ」
詩音の説明に俺は頷いた。
「こんなに平和な日々が続いているなんて…今更ながら嬉しいことだな」
「なんですか?まだあの事件を引きずってるんですか?」
ああと俺は頷く。冷めないのは町だけではなく、あの事件もまだ冷めてはいない。
「あの事件は…一生引きずる出来事だろうな。過去の出来事でもあれは俺たちに大きすぎた」
「………」
「まだ子供の俺たちには…刺激が強すぎたんだよ」
過去のことを今更ながらそう振り返った。
今思うと、あれは大人が処理するのが常識的だ。でもそうではなかった。子供の俺たちはそんな常識を非常識に変え打ち破った。
忘れてはいけない。忘れるわけにはいかない。
「それは…お姉のことも同じですか?」
意外な質問に俺は呆気を取られた。しかしその答えはすぐに出た。
「わからない。まったく…わからない」
素直に答えたつもりだ。それ以外見つからないと頭が言う。
わからないなんて答えは答えにならないが、少なくとも今出来る精一杯の心境だった。詩音はそれを悟ったか穏やかに言った。
「そうですか…そうですね」
詩音の声は至って冷静だった。それが余計に胸に刺さり痛みに変わっていく。
「こんな曖昧なこと言ってるのに怒らないのか?」
「怒る理由がありません。圭ちゃんとお姉の恋愛に釘をさすことはしません。それがお姉を応援する中で一番良い方法ですから」
大人だなと実感させられる答えに俺はどれだけ子供なのかと痛感させられた。
「…俺は魅音を泣かせるかもしれないんぞ」
「構いませんよ。最初は怒るって決めてましたが、圭ちゃんなら大丈夫って信じられましたから」
「…………」
「さっきの話、魅音と似てますよ。お互い似たもの同士で羨ましい限りです」
からかう口調で言うがそれは本心だと悟るのに時間はかからなかった。
詩音は、魅音を応援し俺を応援している。似たもの同士だからって理由もあるが今はきっと二人の幸せのために。
「でも圭ちゃん、いつまでのその傷を引きずってたらいけませんよ。傷は付き合えない理由にはなりませんよ」
「ああ。わかってる」
「それともう一つ。付き合うことは人を不幸にすることじゃありませんよ。まったく、そんな考えもお姉にそっくりですね」





今日も一日が終わろうとしていた。
気が付くと一時間が過ぎていたと虚しい時間が流れ続けていた。それを何回も繰り返しているとやっと夕方になったことに気づいた。
今日、何をしていたかと訊かれたら私には答えようがない。圭ちゃんのことだけ考えて一日を終えたなどバカバカしいと言われるのがオチだ。
だけどそうするしかないのだった。一日をどう過ごすことなど元から決めていなかった。ただ時間が流れればいいと思っていた私からしてみるとこれが一番いいすごし方だった。
だから夜もこんな感じで時間が過ぎて一日が終わる。そして明日もそれが続くだろう。
期待…してるのだろうか。
私は待ちつづけている、彼を…。来るわけがないってわかっているのだが自分で行こうなんて思えない。それじゃあこのまま繰り返しと考えてしまう人もいるだろうがその通りだ。
圭ちゃんが会いに来るまで私は家を出る気はない。それが死ぬまで続こうが私はそうする気だ。
でも不思議だ。いつこんな考えが思い浮かんだのだろう。自分でもわからない疑問だがそれを解明しようとは思わない。
好きな気持ちは変わらない。それだけわかっていればあとはどうでもいい。
そう…思ってた。
「あらあら。風に当たる姿、素敵な絵になりますよ」
軽い口調を言う妹、詩音は私を見ながらそう言う。
相変わらずの口調だが少し元気がないことにはすぐに気づいた。
「……ごめん」
咄嗟に謝罪の言葉が出た。詩音には申し訳無い気持ちしかなかった。
しかし詩音はいいですよと言い私と同じように風に当たるように歩み寄ってきた。
「圭ちゃんに会いました」
不意に詩音がそう囁いた。それを聞いた途端私は頭を殴られたような痛みを感じた。
「それで、映画を見て色々お話しました」
「映画…?」
「お姉…あの映画ですよ。時間的にも空いていた時間帯でしたし圭ちゃんに見せました」
まさかと私は声を上げた。
「なんで見せたの…?」
「ちょうど良かったですよ。圭ちゃんの話と主人公が見事に合っていて…あれはもう圭ちゃん自身と言っていいほど似てましたよ」
「…………」
「圭ちゃん…それを見て少し考えが変わったようです」
詩音が説明する中、私の頭の中はメチャメチャにかき回されていく。
真っ白な頭の中に色々なイメージが浮かびに浮かび消えて新しいものがまた浮かぶ。
何を考えているかわからない状態なのに少しずつ真意と思考の回復に近づいていく気がした。
「……少し、散歩してくる」
それだけを言い残し、真っ白な浴衣姿で私は門へと向かった。
詩音は何も言わずただ私だけを見て静かに送り出してくれた。




詩音に送られて家に着いたのは日が暮れる少し前。
その後、園崎家に行くと言い残し詩音は去っていったがどうしようもない後味の悪さだけが胸に残っていた。
これも全てあの映画のせいだ。
何故あんな綺麗なタイミングに、あの映画は上映をしていたのか。いやそれ以前にあの内容は俺と魅音じゃないか。
心に引っ掛かる何かが俺を苛立たせる。それがどうしても気になって気になってむしゃくしゃしてる。
だが確実に何かが変わった気がしている。それも今の考えとは逆の方向へと。それが良い方向なのかはわからないが、少しずつ時間をかけて確かに変わっている。
気がするではなく確信だ。これは魅音のことだ。
だからと言って、すぐに何かを起こそうとは思わない。それはまだ始まったばかりのことだ。これが良いか悪いかは時間が解決してくれる。
そのための…二日間だ。
「…えっ?」
やっぱり、この部分はおかしいと気づく。
だって…なんで二日間なんだ?
いつ俺はそれしか時間がないなんてわかっていたんだ?
二日間って言う時間もすぐに出てくるのもおかしいしそれに気づかずにいた俺は一体…?
疑問の点は二日間。これが何を意味し何を起こすのか俺にはわからない。なのに二日間と頭が訴えかけてくる。
どういうことだ?これじゃあまるで……
「未来がわかってるみたいじゃないか」
バカバカしい妄想かもしれないがすぐに二日間と言うのは自分の中で何かを理解し未来を予測したのではないかと俺は思ってしまう。もしそうじゃなくてもこの時間は何かのタイムリミットかもしれない。
考えれば考えるほど泥沼にはまっていくのがわかっている。これではまるで答えを導かせないみたいではないか、と思うがきっとそれは正解だろう。
自分自身ではこの答えに気づいているはずなのに俺は気づけないなんておかしな話だ。しかし気づけないのは何かがおかしいからだ。
抜けたカケラを探そうにも今の俺にはそんなものを見つけるのは無理な話だ。
自分の中で薄々気づいて溜息をついている時だった。




「すまないな。いきなり飯を作ってなんて言っちまって」
「いいよ。圭一くんの顔を見れただけで満足だよ」
レナはにこやかに笑いながら玄関を上がった。その仕草はレナそのものなのに少しだけ、おかしな気分であった。
…レナの気持ちがわかったからか、少しだけドキッとしてしまった。でもそれはレナだけではないだろう。沙都子も梨花ちゃんも羽入も…魅音も。
「今日は…どうだった?」
後ろからレナに訊くとレナは足を止めた。
「魅ぃちゃんも…学校休んだ」
「………そっか」
予想はしていた。でも言われて見て初めて胸に痛みが走った。
振った気はないのだがあれは他者から見たら振ったになるのは馬鹿の俺でもわかる。それをいきなり言われて…ショックを受けない方がおかしい。
「レナ、すまない」
「なんで謝るのかな?かな」
「みんなに…余計な迷惑ばかりかけて…俺ってやつは」
自分で悔やんでも仕方ないのは十分承知の上だ。しかしこう言うしか、なかった。そんな自分がどうしようもなく悔しくて憎い。
「圭一くん……」
「悪い。自分でも情けないことを言ったって承知だったが…すまない、忘れてくれ」
本当はまだまだ言いたいことはあったがこれ以上言ってしまったら俺は本当に駄目になってしまう。
自己嫌悪ばかりだが多少の常識は頭にしっかり入り込んでいた。それだけが今の俺を落とさないように支えてくれる。
はっきり言うと、俺はもう精神的に疲れている。本当は休んだ方がいいと思うが、これの治療方法は一つしかない。
「時間がない。とにかく急がないと」
「………」
察したレナの顔はとても悲しそうで涙を流してもおかしくないほど弱々しかった。罪悪感が一層胸を貫き、少しだけ自己嫌悪に陥った。
「圭一くん…」
レナは鋭かった。俺のことをまたすぐに察してくれたらしく表情を無理に直し俺の手を優しく握ってくれた。
俺としては、レナの笑顔が痛々しかったがそれ以上にレナの優しさが胸を包み込み少しだけ気持ちが軽くなった。
「ありがとう、レナ」
「ううん。レナには…これしか、できないから」
それは本心からの言葉であったとわかってしまった時、俺は本当の実感をもってしまった。
―――すまない、レナ。
わかったことが一つだけあった。それが痛々しくて、俺は静かに目を閉じ天井を煽った。



罪とは、なんだろうか?
素朴な疑問だ。しかしそれは人間が何十年、何百年かけてもわかることのない疑問だ。
それを知るのは数少ない人間だけだ。いや、正確には気づくのは。
本当はみんなそんなことを知っている。しかし気づこうとしないだけだ。
みんなにとって罪を意識するのはあまり気にすることではない。少なくても、これをしてしまったら犯罪、とだけは頭の中にしっかりと埋め込まれている。
しかしそれを知りながらも人は罪を犯す。仕方のないことだ。
その全ては人の心が悪いからだ。だから行ったその人は全ての責任を負わなくてはならない。
それは一人だけではなく二人のときでも三人の時でも同じだ。人数は関係ない。あるのは自覚だけだ。
世の中では、自覚があるのとないのとで天と地の差に分かれる。
少なくとも、雛見沢に住んでいる人間には自覚はある。だからこそ平和な村でいられる。
それは、東京から来た「前原圭一」にも十分言えたことだ。




レナには感謝しても仕切れないほど感謝している。
料理だけではなく家事も少しこなしてくれて、俺を支えてくれている。
でも……優しさは確信に変わり、確信は罪悪感に変わっていった。
「レナ……」
居間のソファーに座りながら気づいてしまった想いに俺は頭を悩ませた。しかし答えを導き出すのにはあまり時間を要さなかった。
「圭一くんは、誰が好きなの?」
不意打ちだった。やることが終わったのと同時に俺の目の前に来てレナは俺に訊いてきた。
だが不思議なことに俺は冷静にかつ迅速にその答えを導き声にした。
「わからない…本当に、わからない」
このことを言うごとに本当に自分が情けなくなる。毎日のようにみんなといるのに俺の中で少しも恋愛感情が生まれないとはどういうことだ。
しかしその原因も少しは自覚しているし気づいている。もう答えは見つかっているが、俺は何度も何度もそれを繰り返し苦しんでいる。
苦しみの連鎖というものが俺の頭に何回も回り続けているのがわかる。そのたびに俺の心は鉄のように錆びていった。
「だけど…気づかなくていけないのはわかっている。だから俺は答えを探している」
「………」
「わがままだってことは百も承知だ。でも…俺、こうするしかわからないから」
レナは…納得したように頷き静かに眼を閉じた。
「……好き」
「え…?」
「圭一くん…好き」



時は静かに刻み、二つの運命は二つの選択に導かれた。
カケラは三つ。
圭一の罪・映画の内容・二人の心。
これが明かされる二日目、最後の日は刻一刻と…迫っていた。




もう…何も無駄なことは言うまい。
ここからは長くなりそうだorz
スポンサーサイト



« 長すぎて眠いよ~ | HOME |  情尽し編 其の九 選択 »

コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

感想

情尽し編 其の八 映画、読みました。
気が付かない筈だった、気が付かないつもりだった、気が付かないと眼を逸らしていた。
でも、気が付いてしまった。
彼は己が岐路と決断の時に、彼女は己が真意と組み立った型の本当の意味に。

れなは一人立ち向かう、己が愛した彼、圭一を自分が傷付くのも躊躇わず、導く為に、己の親友であり、仲間である彼女、魅音の為に。
そして、自分の為に。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

トロイメライ魅ぃさん
>まさかのですよ。レナも曝け出させちゃいました。
想いがどんな方向に行きどう終わるのか…う~ん悩む(考え中

影法師さん
>意味を知ってしまったからこそ、行き止まりが見え始めてきていますね^^
そして、レナの言葉に圭一は…。
………レスっぽくなくてすいませんorz

レオ助さん
>いえいえ、実行してくれただけでも感謝ですよ^^
んで、な…直せっと言われても……バナー使えませんし、ちゃんとリンクしてありますし……えっと、どうすれば…いいの?(泣)

コメントの投稿

 
管理者にだけ表示

 | HOME | 

FC2カウンター

最近の記事

最近のコメント

月別アーカイブ

カテゴリ

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

プロフィール

キラ

Author:キラ
中二病の同人大好きな変態。アニメよりゲーム派。
07th作品はうみねこよりもひぐらし。
いまだに圭魅が大好き主張は変わらず。
創作活動は別館で進行中。

カレンダー

03 | 2024/04 | 05
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

リンク

リンク

参加中同盟

ひぐらしのなく頃にWebRING

貰い物

わけあい:18禁圭詩×魅マンガ ヂャイロ